幼児の公園大劇場ー幼児の行動は発達のサイン

公演で幼児を見ていると、そこはもう“劇場”。
出演者である子どもたちは全員が主演、しかもその日その場で演目を生み出していく即興型。

こんにちは、東京都港区西麻布にあるBUDDYキッズ運動教室のくるみ先生です。
幼児の発達や運動指導について、保護者の皆様に役立つ情報をお届けしています。

運動指導者の目線で観察していると、子どもの“おもしろ行動”はすべて
身体・脳・心の発達がむき出しになった最高のサイン

今日はその6つの名場面を、少しコント調に、少し真面目に解説します。

ポケットのブラックホール

幼児が公園に降り立つと、まず始まるのは“収集の儀”。
石を拾い、葉っぱを拾い、どんぐりを拾い、なぜか砂までもポケットへ。
「この石はさっきと形が違う!」「この葉っぱは色が違う!」
そんなふうに、本人なりにちゃんと選んでいます。
子どもにとっては一つひとつが“別物”です。

あれこれ詰め込み過ぎてポケットが別次元につながってしまう。。。笑

この“ブラックホール現象”
触ったときの感触や重さ、色や形の違いをじっくり比べる認知の発達
指先でつまんだり拾ったりする巧緻性
「集める→しまう→あとでまた見る」という行動の流れの学習
「これは自分のもの」という所有感の芽生えが、一気に育っています。

見た目はただの“石コレクション”ですが、
中身はかなり高度な学習プログラムです。

洗濯機が石を吐き出すバッドエンドも、発達としてはハッピーエンド。

段差界のストイック修行僧

段差を見ると突然スイッチON。

登る。
降りる。
登る。
降りる。

静かに始まる“段差修行・千本ノック編”。

大人:「もう帰ろうか?」
子ども:「(無言で21回目へ)」

本人は特にドヤ顔でもなく、ただ淡々と続ける。
このストイックすぎる“段差修行”こそ、下半身発達の黄金ステージです。

片足に体重を移し替える感覚は、走る・跳ぶといった動きの土台になります。
足裏に伝わる硬さや傾きの違いは、バランス感覚そのもの。
何十回もくり返すうちに、左右差が少しずつ整い、ケガの予防にもつながっていきます。

そして何より、「できた」を自分でくり返しにいく集中力。
誰かに言われたからではなく、自分から反復する練習態度は、この時期だからこそ自然に出てくるものです。

段差一つで、実は全身の運動基礎がじわじわ仕上がっていきます。

くぐり抜け部

幼児が見つけたもの:隙間
幼児が取る行動:くぐる

椅子の下、机の下、ベンチの下。
全部、秘密の入口に見えているらしい。

この“くぐりブーム”は、運動指導者にはたまらない。

頭をぶつけないように自然と低い姿勢をとるので、体幹はフル稼働
視界が変わることで、空間の広さや距離感の感覚も刺激されます。
「自分の身体の大きさで、ここは通れるか、通れないか」を試しながら、
ボディイメージ(自分の身体サイズの感覚)も育っていきます。

そして、「ちょっと怖いけど、おもしろそう」が勝つとき、
子どもの探索行動は一段階ギアが上がります。

くぐぬけに成功した瞬間のテンションは2倍。
これまたエンドレス選手権開始。

“見てて!”の無限ループショー

子ども:「先生!いまの見てた!?」
先生:「ごめん見てなかった!もう1回!」
子ども:「いいよ!見てて!」

くるみ先生、目も耳も足りません。
あちこちから飛んでくる「見てて!」の声。

一見ただのアピール合戦ですが、実はとても大事な時間です。

「これをやるよ」と言葉で予告したり、
大人の注意を自分に向けたり
できた瞬間をちゃんと共有したりすることで、
コミュニケーションの力と自己肯定感が一緒に育っていきます。

「すごいね」「さっきより高く跳べたね」と返してもらうことで、
ただの“できた”が、“自分の成長として自覚できた”に変わる。

だから私は、可能なかぎり全力で見る。

そしてこのショーも、ロングラン。

天地を支配するポーズ選手権

少し高い場所を見つけると必ず始まる儀式。

①よじ登る
②立つ
③手を離す
④満面のドヤ顔

大人は心臓ヒヤヒヤ。本人は「世界のてっぺんに立った」くらいの気持ち。

この一連の流れの中で、
足の裏と身体の揺れを頼りに重心をコントロールし、
ぐらっとしたときにとっさに踏み直すバランス反応が鍛えられます。

高い場所から見渡す景色は、いつもと違う世界。
視界の高さが変わることで、「自分はいまここにいる」という感覚も強くなります。
そして、登れたこと・立てたこと・怖くてもやり切れたことを、自分の中で“成功”として認識する力も育ちます。

カメラを向けると、ポーズはさらに進化。
その一方で、自力で降りてこられない確率は約40%。
「そこまでがワンセットかい」と突っ込みたくなる場面です。

最終幕:帰宅拒否の大号泣フェス

そして、ラストシーン。

大人「そろそろ帰るよ〜」
子ども「いやああああああああ!」

地面に寝そべる。
身体は完全に脱力しているのに、抱き上げた瞬間、なぜか体重が+20kgに感じる。

この“帰宅拒否フェス”は、公園界の名物です。

大人からすると、「そんなに泣かなくても……」と思ってしまうところですが、
ここにもきちんと意味があります。

楽しかった気持ちをどう表現するか。
まだ遊びたい気持ちと、「帰らなきゃいけない」という現実のあいだで、
心の切り替えがうまくいかないむずかしさ
「やりたいこと」をちゃんと主張してみる経験

感情をコントロールする力は、一朝一夕では身につきません。
大号泣も、“全力で楽しんだ証拠”であり、
そこから少しずつ、「今日はここまで」を覚えていきます。

公園は、幼児の“発達ラボ”

こうして見てみると、幼児の“おもしろ行動”は、どれもきちんと意味があります。

ポケットの中身も、段差修行も、くぐり抜けも、
「見てて!」も、ドヤ顔ポーズも、帰宅拒否の大号泣も。

大人の目には「なんでこんなことを?」と映る行動が、
子ども本人にとっては、今の自分に必要な刺激を取りに行く行動になっています。

公園は、子どもにとっての大劇場であり、同時に“発達ラボ”でもあります。
大人が少し引いて眺めてみると、
その子がいま何にハマっていて、どんな力を伸ばしているのかが、見えてきます。

危ないところだけそっと見守りながら、
「また石集めしてるな」「今日も段差修行が始まったな」と、
舞台の裏側を楽しむように観察してみる。

そんな視点で公園を眺めると、
子どもの行動が、ちょっと違って見えてくるかもしれません。